独立行政法人会計基準について解説
独立行政法人とは
独立行政法人とは、国から独立した法人格として、公共的な観点から行われるべき事務及び事業の一部を実施することを目的として設立された法人です。国から独立した運営を行うことで、業務の質の向上や効率性の向上などの効果が期待されています。
独立行政法人の会計
独立行政法人の会計は、原則として企業会計原則により作成するものとされており、複式簿記、発生主義による会計が行われています。ただし、独立行政法人の事業は公共性があること、利益の獲得を目的としておらず、独立採算制を前提としない等の特殊性を考慮し、いくつかの点で企業会計とは異なる会計処理が規定されています。
運営費交付金の処理
具体例として運営費交付金の処理(業務達成基準)を見ていきたいと思います。運営費交付金とは国から独立行政法人の運営の為に交付される資金で、もともとは税金です。
運営費交付金を受領したときは,収益には計上せず、一旦負債に計上します。
・運営費交付金5,000,000を現金で受領した。
現金 5,000,000 / 運営費交付金債務 5,000,000
・A事業の業務費として900,000を支払った。
業務費 900,000 / 現金 900,000
業務の進捗に応じて,運営費交付金債務の収益化が行なわれます。
・A事業が完了した。(A事業に配分される運営費交付金見積額1,000,000)
運営費交付金債務 1,000,000 / 運営費交付金収益 1,000,000
この場合A事業からは100,000(1,000,000-900,000)の利益が発生することになります。
独立行政法人の財務諸表
独立行政法人の作成する財務諸表は、貸借対照表、行政コスト計算書、損益計算書、純資産変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、利益の処分又は損失の処理に関する書類,および附属明細書からなります。(平成30年改訂の基準による)
特徴的なものとしては行政コスト計算書がありますが、損益計算書の費用と損益計算書に計上されなかった減価償却相当額や(詳細な説明は省略します)を加算して、そこから自己収入を差し引くことで、国民が負担するコストが総額でいくらになるのかを表すものとなっています。
まとめ
独立行政法人の財務諸表は国民に対して有用な情報を提供しなければならないとの考えから、原則的に企業会計に沿った会計処理、開示が行われています。ただし、独立行政法人特有の会計処理も多いことから、理解するのが難しい点も多いと考えられます。