国の会計制度について解説

国の会計制度の概要

国の会計制度は財政法や会計法で規定されていますが、具体的に作成される書類としては、予算書や決算書があげられます。これらは基本的に現金主義、単式簿記で作成されています。

民間の企業は、事業活動の結果としてどれだけ利益を得たかということが重視されますが、国の活動は利益の獲得を目的とするものではありません。簡潔に言うと、税収で得られた資金をもとに必要な施策を執行するのが国の役割であり、そこでは収入(税収等)とそれらに基づいた支出(予算の執行)の管理が重要になります。

このような国の役割から考えると、国の会計として現金収支に基づいた単式簿記による記帳が簡単でわかりやすいといえます。また、国民から徴収した税金を扱うことから厳格な説明責任が求められますが、現金収支にもとづいて記帳する方法は、恣意性が介入する余地が少なく、客観性に優れたものであるといえます。

しかしながら、単式簿記では把握しきれない問題もあります。
財政の悪化により国の借金の問題は大きく膨らんでいますが、単式簿記による会計のみではストックの情報を即時に把握できず、現金収支であるフローとその結果としての国の財政状態であるストックを体系的に管理することができません。
また、政策ごとの評価もしにくいとの理由もあります。予算書や決算書の科目は支出の性質ごとに集計されており、政策ごとには分類ができないため、実施した個々の政策に費用がどれだけかかったのか把握できません。

これらの問題に対処するため、現在では国でも複式簿記、発生主義にもとづく財務書類が作成されており、国の財務書類や省庁別の財務書類(独立行政法人等を連結対象とした連結財務書類を含む)として公表されています。また、政策ごとにかかる費用を集計した政策別のコスト情報も公表されています。

財務省HP→国の財務書類(省庁別、一般会計・特別会計、政策別コスト情報・個別事業のフルコスト情報)

財務書類の特徴

国の財務書類の特徴を見ていきましょう。
国の財務書類は貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書、区分別収支計算書、附属明細書から構成されています。

貸借対照表

貸借対照表は企業会計と同じで、財産状態を表すものですが、特徴的なのは、純資産の部が資産負債差額とされている点です。企業会計の純資産の部は払込資本や、事業活動の結果として得た利益剰余金等から構成されますが、国にはそういった取引が想定されず、企業会計でいうところの純資産の部に特段の意味を持たせることが困難なため、資産・負債差額として一括して表示されています。

業務費用計算書

企業会計では経営成績を明らかにするため、損益計算書が作成され、収益から費用を差し引いて利益を計算します。しかし、国の活動は利益の獲得を目的としておらず、財源と費用の収益対応関係はないことから企業会計のような利益計算をすることは適切ではないと考えられます。重要なのは政策の実施にあたりどれだけの費用がいかに使われたのかということであり、そういった費用を重視する考え方から業務費用計算書が作成されています。

業務費用計算書は費用に焦点を当てたものであり、これだけでは貸借対照表の資産・負債差額の増減内容がわかりません。資産・負債差額増減計算書では税収や資産の評価差額等も合わせて計上することで資産・負債差額の増減要因を開示しています。

区分収支計算書

区分収支計算書は企業会計におけるキャッシュ・フロー計算書と同様であり、業務収支、財務収支に区分して表示されています。

また、どのように複式簿記の財務書類を作成しているかですが、財務省が公表している資料によると、日々の仕訳に関しては予算の執行と同時に複式簿記の仕訳を行うようなシステムになっているようです。そうして出来たデータをもとに財務書類の勘定科目への組替、発生主義による決算整理仕訳を行うことで作成しています。

今後の課題

このように国でも複式簿記による会計が導入されていますが、財務書類は作っただけでは意味がありません。今後は、これらの情報をいかに予算の策定や政策の評価に活かしていくかが課題となっています。

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