土地改良区会計基準について解説

土地改良区とは?

土地改良区とは、土地改良事業を行政に代わって実施する公共団体です。

土地改良事業とは土地改良法によって定められた事業で、農業用排水施設、農業用道路などの施設の新設、区画整理、農用地の造成などの事業のことをいいます。

土地改良区は地区内の組合員によって組織され、運営に要する費用は組合員が負担します。平成28年現在で、全国に約4,500の土地改良区があります。

 

土地改良区の会計の概要

土地改良区の会計は単式簿記による収支決算書の作成を中心として行われてきました。しかし、単式簿記による会計にはいくつかの問題点が指摘されていました。

  • 土地改良施設等の土地改良区が保有する財産を正確に把握できない。
  • 減価償却費を含めた事業コストを正確に把握できない。
  • アカウンタビリティの点から単式簿記による情報開示では不十分。
  • 不正の防止という観点から単式簿記では限界がある。

こうした問題点の克服のため、国により複式簿記の導入が検討され、平成23年に農林水産省から土地改良区会計基準が示されました。また、同じく単式簿記を基礎としていた地方自治体では複式簿記の移行が完了しつつあることをうけて、土地改良区においても複式簿記への移行が促進されることとなりました。

 

土地改良区会計基準における財務諸表

土地改良区会計基準では、財務諸表として貸借対照表と正味財産増減計算書及び財務諸表に対する注記と財産目録の作成が求められています。正味財産増減計算書は企業会計でいう損益計算書と考えられますので、作成される書類としては企業会計とほぼ同じとなっています。

※キャッシュ・フロー計算書については、土地改良区はキャッシュ・フローを重視した運営が想定されないこと、複式簿記以降後も収支計算書の作成がなされることから必須とはされていません。

 

会計基準の特徴

土地改良区会計基準は複式簿記の導入を目的としたものであることから、企業会計の考え方が取り入れられています。また、土地改良区のみを対象とした基準であり、個々の土地改良区で行われている事業は企業会計のように幅広くないことから、複雑な会計処理も少なく理解しやすい基準であると言えます。

ただし、企業会計とは異なる点もいくつかあります。

土地改良区会計基準では、貸借対照表の区分として指定正味財産と一般正味財産が設けられています。また、基本財産や特定資産の注記が求められているなど、公益法人会計基準を参考にしている部分があります。これらは企業会計には無い会計処理なので、初学者にとっては難しいかもしれません。

また、特殊な会計処理として維持管理適正化事業に係る仕訳などがありますが、理解するためには発生主義や複式簿記といった知識が必要になるでしょう。

 

※公益法人会計基準についてはこちらで解説しています。

まとめ

複式簿記への移行は記帳の問題だけではなく、会計システム全体の見直しが必要となることから時間も手間もかかります。きちんとしたスケジュールを立てて実施することが必要になるでしょう。

また、複式簿記に移行しただけでは意味がなく、単式簿記で発生していた問題点を解決できるように財務諸表を利用することが求められます。これは、新たに複式簿記を導入する組織全体に共通する課題と考えられます。

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