地方公会計制度について解説

地方公会計制度の概要

地方公共団体の会計では、従来から予算の適正な管理・執行という観点から現金収支に基づく会計が行われてきました。平成に入ると地方公共団体の財政の悪化が問題となり、財政の効率化、透明化を図るため、平成18年度に総務省から財務書類の作成モデルとして「地方公会計制度基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」が示され、財務書類の作成が行われるようになりました。

しかしながら、複数の作成モデルがあることから地方団体間での比較が困難であること、固定資産台帳が未整備であること等が問題となり、その後も見直しが行われ、平成27年度に統一的な基準による地方公会計マニュアルが示されました。

統一的な基準による財務書類

統一的な基準では貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書を作成することとされています。

貸借対照表

貸借対照表は地方公共団体の財政状態を表すものです。基本的に企業会計における貸借対照表と同じですが、純資産の部分が、固定資産等形成分と余剰分に区分されています。固定資産等形成分は、資産形成のために充当した資源の蓄積であり、原則として金銭以外の形態(固定資産等)で保有されます。簡単に言うと、地方公共団体が調達した資源を充当して資産形成を行った場合、その資産の残高(減価償却累計額の控除後)を意味します。余剰分は地方公共団体の費消可能な資源の蓄積であり、原則として金銭の形態で保有されます。

行政コスト計算書

行政コスト計算書は会計期間中の地方公共団体の費用・収益の取引高を明らかにするために作成されます。収益の主なものとしては、使用料及び手数料があり、地方公共団体がその活動として一定の財・サービスを提供する場合に、当該財・サービスの対価として使用料・手数料の形態で徴収する金銭をいいます。なお、税収は収益には該当しません。

純資産変動計算書

純資産変動計算書は貸借対照表における純資産の変動を表すものです。純資産変動計算書は、「純行政コスト」、「財源」、「固定資産等の変動(内部変動)」、「資産評価差額」、「無償所管換等」及び「その他」に区分して表示します。財源は、「税収等」及び「国県等補助金」に分類して表示します。

資金収支計算書

資金収支計算書は企業会計でいうところのキャッシュ・フロー計算書に該当します。資金収支計算書は、「業務活動収支」、「投資活動収支」及び「財務活動収支」に区分されます。

財務書類の作成方法

財務書類は歳入歳出のデータをもとに作成されます。総務省から公表されているマニュアルでは、一般会計等の歳入歳出データから複式仕訳を作成する方法としては、①取引の都度、伝票単位ごとに仕訳を行う日々仕訳と、②期末に一括して仕訳を行う期末一括仕訳とが示されています。

両者ともに原理は同一ですが、日常的に仕訳を作成するためには、会計システムの整備が必要になります。一方で一括仕訳の場合は、システムの整備は必要ありませんが、1年分の仕訳を一括して行うため決算時における業務負荷が大きくなると考えられます。

財務書類の活用

財務書類を作成しただけでは意味がありません。総務省のマニュアルでは以下のような財務書類の活用方法が示されています。今後は積極的に財務書類を予算編成や政策に活かしていくことが求められます。

  • ストック情報が明確となることから、公共施設の建設や老朽化対策など、管理に役立つ。
  • セグメント分析を行うことで、政策ごとのコストが把握できる。
  • 地方公共団体との比較が可能となり、一人当たりの負債額などの指標を用いることで、予算編成などへの活用が見込まれる。

参考>>>総務省HP

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