キャッシュ・フロー計算書の構造(直接法と間接法)

キャッシュ・フロー計算書における営業キャッシュ・フローの表示方法には直接法と間接法があります。直接法は商品の販売や仕入など取引ごとにキャッシュ・フローが表示されるのでわかりやすいのですが、間接法の場合、税金等調整前当期純利益から始まって、売上債権や仕入債務の増減、減価償却費などの項目が出てくるので、なかなか理解しづらいものがあります。ここでは、間接法の営業キャッシュ・フローの表示について考えてみたいと思います。

直接法

間接法について考える前に、比較のために直接法の営業キャッシュ・フローの表示について見てみます。

仮に当期の取引は下記の5本の仕訳のみとします。それぞれの仕訳についてキャッシュ・フロー計算書を直接法で作成した場合の表示を右側に記載しています。

仕訳 キャッシュ・フロー計算書上の表示
仕入 100 / 買掛金 100 →なし
仕入 100 / 現預金 100 →商品の仕入れによる支出
売掛金 200 / 売上 200 →なし
現預金 200 / 売上 200 →商品の販売による収入
減価償却費 50 / 固定資産 50 →なし

 

直接法の場合、資金(現預金)の移動があればキャッシュ・フロー計算書に記載されます。したがって2番目と4番目の仕訳の現預金の金額(下線部分)がキャッシュ・フロー計算書に影響します。

結果としてキャッシュ・フロー計算書は以下のようになります。

商品の販売による収入 200
商品の仕入による支出 △100
営業活動によるキャッシュ・フロー 100

 

間接法

間接法の場合はどうなるか、直接法の場合と比較するために同じ様に表にまとめてみました。

仕訳 キャッシュ・フロー計算書上の表示
仕入 100 / 買掛金 100 →税金等調整前当期純利益 / 仕入債務の増減
仕入 100 / 現預金 100 →税金等調整前当期純利益
売掛金 200 / 売上 200 →売上債権の増減 / 税金等調整前当期純利益
現預金 200 / 売上 200 →税金等調整前当期純利益
減価償却費 50 / 固定資産 50 →税金等調整前当期純利益 / 減価償却費

 

直接法の場合は現預金の移動のみ集計しましたが、今度は現預金以外の勘定科目(下線部分)を集計しています。仕入や、売上、減価償却費は税金等調整前当期純利益として集計しています。

仕訳は必ず貸借が一致するので、現預金以外の勘定科目を項目別に集計してキャッシュ・フロー計算書に記載すれば、最終的な合計額は当期の現預金の増減額と一致することになります。

結果としてキャッシュフロー計算書は以下のようになります。

税金等調整前当期純利益 150
減価償却費 50
売上債権の増減額 △200
仕入債務の増減額 100
営業活動によるキャッシュ・フロー 100

 

キャッシュ・フロー精算表

実務的にはキャッシュ・フロー計算書は精算表から作成することが多いので、精算表のように貸借対照表の増減から考えてみます。

勘定科目 前期 当期 増減 キャッシュ・フロー計算書の表示
現預金 100 200 100
売掛金 100 300 200 売上債権の増減額
固定資産 100 50 △50 減価償却費
買掛金 △100 △200 △100 仕入債務の増減額
利益剰余金 △200 △350 △150 税金等調整前当期純利益

※貸方科目は符号を逆にしています。

この場合、上記の仕訳における各勘定科目の金額は増減の欄に集計されることになります。売上や仕入、減価償却費などの損益計算書項目は利益剰余金の増減となります。現預金以外の増減欄の金額をキャッシュ・フロー計算書の各項目に集計することでキャッシュ・フロー計算書を作成していると考えることができます。

以上、間接法によるキャッシュ・フロー計算書の構造について見ていきました。精算表を使えば貸借対照表の増減を基にして、比較的簡単にキャッシュ・フロー計算書が作成できます。ただ、増減額をどのように集計していくのかについては少し難しい知識が必要になってきます。

 

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